Unknown@Presence

色々あれこれ。

その7 ユウヤ

西

 今日はびっくりしたな。北口エロか。
 三條電機はそのまんまだな。三條畑の手前に三條前があって、そこから三條電機の工場の人がどっさり乗ってくる。三人に一人はIDを首にぶら下げたままだ。写真もついてるのにな。外すように言われないのかな。
 オレも入館IDを持ってたことがあるけど、洗面所で濡らしそうになるので引き出しに入れておいた。そしてそのまま忘れて帰って入館できずに叱られたことがある。
 偶然、なんだろうか。オレが三條電機、蒼井君が北口エロじゃなくて北口エレクトロニクス、武田さんがたぶん長尾電子の近く、っていうのは。
 他の会社の人たちも、ああしてIDをぶら下げているんだろうか。
 三日おきにやってくる赤城さんは、半月に一回、オレが持たされているIDを回収する。代わりに新しいのをくれるのだが、妙にがっちりしたケースに入っている。
「これって何のためのIDですか」
 入館IDにもいろいろあって、写真付きで警備員に見せるものや、ドアキーになっているもの、PCのパスワードが入っているものもある。でも、このIDはどれでもなくて、キーにも証明書にもならない。
「えーと、あの、よく分からないんですけど、白川さんのタイムカードの代わりのようなものです」「タイムカードは別にあるじゃないですか」「いえ、その、それ以外に、私とこうして面談しているという証明のようなものなんですよ、うまく説明できなくてすみません」
 顎を突き出して、ぺこぺこと謝る。どうして赤城さんの鼻はいつもあんなに赤いんだろう。陽焼けにしてはちっとも黒くならないし。まさか名前に赤が付いてるからとか。んなわけないな。
 いつものことだけれど、赤城さんの話には少しも集中できない。何でも言って下さいね、と毎回念を押すわりには何も知らないみたいだし、調べておきます、聞いておきます、と言っておいてそれっきりということがしょっちゅうだし、あきらめて自分で何とかしてそれを報告すると、言ってもらわないと困るんですよ、と言うし。
 メモは取っているみたいだけれど、あんな穴だらけじゃメモにならない。
 まあ、しょうがないか、三ヵ月だし。前の仕事の契約が満了して、一ヵ月くらい休んで勉強でもしようかと思っていたら電話がかかってきて、その場で決まった仕事だ。交通費は出るし時給も悪くない。期間が短い仕事はわりと好きだ。時間内にきちんと仕上げれば定時で帰れるし、人間関係を作る必要もない。
 といっても、自然に出来てしまう関係もあるけど。

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