Unknown@Presence

色々あれこれ。

その8 ナミ

何かに似てるなあと思っていたら、最初に思っていたものだというのを思い出した。年か?
 いや、年を言い訳にするのはやめよう。ちょっとアホなだけ。
 アホといえば、今日の貼紙はアホだったな。私の部屋のドアに貼紙が張ってあるのはいいのだが、「←→です。明日一緒に昼メシ行きませんか? 12時に」って、広告の裏にマジックだ。
「12時」だけ字が違うのはどっちが書いたんだろう? 丁寧だから白川君の方か。
 私は8時半4時半あがりで、白川君は9時5時、蒼井君は9時半5時半みたいだ。私は朝食を7時に食べているので、昼は11時からにしている。
 人っ気のない給湯室には熱湯が出る大きな湯沸かし器があるのだが、蛇口のところにべっとり白いものがこびりついていて、たぶん大丈夫なんだろうけど気持ち悪いので、お茶はポットで持参してくる。べっとり白いもの、あれは水道水内のカルシウム。役に立たない知識。
 腹減ったなと思いながら12時まで待ってドアを開けたら、またアホだった。
 白いソファに座った男が二人、足を組んでこっちを向いていたのだ。ホストかあんたら。
 しかも、同時にパッと立ち上がって、妙に丁寧をおじぎをするのだ。
 やめてくれ恥ずかしいから。
「白川さんが言ったんですよ、からかってやろうって」「ソファ持ってきたのは蒼井君だよ」「どこにあったのあんなもん」「なんかあそこ、もとは待合室かなんかだったみたいですね。俺の部屋にあったんすよ。みんなないですか」「私のところはロッカーあるよ。臭いから使わないけどね」「オレんとこには最初、パーテーションが床にばらばらに積んでありましたよ」「ええっ」「なんか、なんだかなー、ですよね、あそこ」「ほんとだね。寒いしね」「まぶしいしね」「うるさいしね」
 がら空きのうどん屋で、からから笑う。素うどん一杯四百八十円。隣の牛丼屋は並んでる。デフレな生き方は嫌いなので、天ぷらうどんにする。六百八十円。イタイ。
「まあ、ちょっとはましになったけど。あ、そうだ。あそこって蜂の巣に似てると思わない?」
 思い出したことを言ってみる。
「ああー。でも、六角形じゃないですね」
 やっばり。白川君は虫の話が好きそうだ。
「んじゃ武田さんが女王蜂っすか」
 蒼井君もか。
「なんであんな細かく区切るんだろうねえ」
 海老天の尻尾を食べたら、白川君がちょっと驚いた。
「もっと細かいの知ってますよ。ドアがぶつかりそうなところにすぐパーテーションがあってね、狭ムい廊下になってた。暗いのなんのって」「そんなとこで働いてたの?」「ううん。顔合わせだけで向こうから断られた」
「ああいうのって、パーテーションの分狭くならないですか」「ふふん」「あ、武田さん、なんか不敵な笑い」「あれって外資の真似よ。外資のキュービックが高くなり過ぎてああなったの。昔はあんなのどこにもなかったね」「昔って?」
 おっと、来ましたよ。
「昭和のオフィスあいや事務所はね、みーんな役所みたいで、煙草の煙で向こうが見えなかったもんなのよ」「へーえ」「でも、PCって煙草に弱いからさ」「煙草がなくなったのと、PCが入ってきたのと、どっちが早いんですかね」

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