Unknown@Presence

色々あれこれ。

その11 スキミング

ID

 男臭いっていうのは初めて聞いたよ。それとも、近頃のヤングの間ではそれが流行りなのか。
 白川くんが言っていたことを、ちょっと考えてみる。
「それって、スキミング?」
 確かに、三人とも大きな電機関係の会社がある駅の近くに住んでいる。
「私はID下げてるのは見たことないけどね」
 あのIDなのにIDじゃないものを渡された時、うっかりして改札にかざしてしまった。チャージカードを交通費代わりに支給されたことがあったからだ。
「そういえば、あの時反応だけはしたような」反応は一回だけで、それきりだった。
スキミングしようと思ったら、多分バッテリーが必要だと思いますけどね」あっ、もちろん俺そんなことしたことないっすよ。蒼井君。
「けど、会社のIDスキミングしたとして、どんな利点があるんだろう」白川君、スキミング前提だよ、それじゃ。
「うーん、IDにアクセス機能が入ってたらネットワークに入れるかも知れないけど。口座とか住所とか堂々とサーバーに乗っけてるところあるからね」「でも、そこまで行くにはパスワードあるでしょ」「たいていはカードの中のパスワードと同じにするからね」「セキュリティに引っ掛かるでしょ?」「社内のLANてわりと甘いみたいだよ。友達が社内LANのセキュリティきつくしたら遅くなるって怒られたって」「まあ、普通は社内LANはラインでデスクトップにつながってるから」「あ、そこは無線LANだったって」「うえっ、こわっ、それはスキミングしなくても取りほーだい」「うん。んで友達は怖いから契約更新しなかったって」
 システムを外注するにせよ社内でまかなうにせよ、せめてサーバー管理くらいはちゃんとしようね、みんな。
「オレも経験ありますよ。一つのフォルダに全部ファイル入れちゃうんで、使いにくいでしょ、って言ったら逆切れされて」「あー、あるねー」「まあ、俺の言い方も悪かったのかも知れないけど」蒼井君はそういうところがある。若いのに年寄りを馬鹿にしない。ま、私の世代が年寄りも若者も馬鹿にし過ぎなんだが。
「赤城さんに聞いてもちゃんと説明してくれないしね」「うん。タイムカードの代わり、って」「うん。あんなカード、他の派遣でもらったことある?」「タイムカードがはっきりニ枚あったことはあるけど」「・・あれ、分解してもいいっすかね?」
 うーん。三人の共通点。危ない橋は渡らない。
「壊れた時に赤城さんに説明するのがめんどくさい」「うん。スキミング疑ってたんですとも言えず」「踏んだら割れた、っていうのはどうですか」「んじゃ蒼井君踏みなよ」「えっ、んと、えーと、なかったことにしてください」
「っていうか、この仕事事体危ない感じしませんか」
 そう。電話一本顔合わせ無し。管理者いない。何の役に立ってるのかも分からない。
「多分、入力が間に合わないデータとかが回ってきてるんでしょうけど」白川君。
「最近のヘルプデスクは時間単位でお金取るらしいから、なるたけヘルプに質問しないでネットで質問しろ、ってことになってるのでは」蒼井君。
 そうなると、つまり白川君のスキミング説は崩れるのでは。「え、なんで」この仕事に意味があるんならスキミングの必要はない。「え、どうして」スキミングが主とした仕事、っていうか目的なら、内容のある仕事を用意する必要はないのでは。
「うーん、その辺がやつらのやり方じゃないですか」「やつらって」「え、なんか、どっかのなんかのやつらっすよ。そいつらはきっと頭ばっかり良くて、悪いことばっか考えてんですよ」
 頭がいい。
 たぶんおそらく、三人は同時に赤城さんの顔を思い浮かべた。

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