Unknown@Presence

色々あれこれ。

その14 女王蜂の憂鬱

 何のために働くか。今はピルのためだと言っとこう。
 9ヶ月前に生理が止まって、友達に話したらさっさと病院に行けって怒られた。深刻な病気のことがある、すぐ行け今行けなんだったら病院紹介するまで言われたので、あわてて駅前のクリニックに行った。
 男性ホルモンが過剰になってそれで生理が止まってるらしく「はあ、ホルモンがオッサン並みなんですね」と笑ったら、でっかいマスクした医者に「真面目な話なんですよ、もう赤ちゃん産めないって泣く人もいるんですよ」と説教された。
 赤ちゃんて、もう再来年には五十だし、結婚もしてないんですけどねー、と言おうとしてやめた。尻に1発注射打ってもらって、生理待ちってことになった。始まったらピル開始、4週間分三千円なり。
 医者はうっとおしかったけど、病院に行ったのはよかった。深刻なものではないみたいだし、低ホルモン投与は癌のリスクも押さえられるんだという。
 んなことを考えつつ、北の政所にいるわけだ。蜂の巣の中で、女王蜂は北にいるのかなあ? で、なんで「まんどころ」って読むんだ? 女がいるところだからか?
 てなことを昼間からつらつら頭に浮かべているのは、ガラスブロックのせいだ。
 その昔、ほんとに昔、まだ20代だったころ、ガラスブロックのあるところに住んでた男とつきあってたことがある。エレベーターホールにガラスブロックがあって、玄関のポーチの所もちょっとガラスプロックになってて、それが好きだった。
 男の顔はもう思い出せないけど、ガラスブロックみたいに綺麗な歯をしてたことだけはよく覚えている。
 ガラスブロックが好きだったんだか男が好きだったんだかもよく思い出せない。ただなんだかんだで三年くらいつきあって、なのに男がトイレから出て来てちゃんと手を洗わないのに気づいて、嫌になって、びしっと縁を切ったんだった。
 いや、違うな。手を洗わないのなんて問題じゃないな。
 他にもなんかあったんだよな。いろいろ思い出せないけど。けど、指摘できなかった。トイレから出てきたら手くらい洗おうよ、くらいのことさえ言えなかったからだ。
 そんなで長いことつきあって、それこそ結婚なんかしてやっていけるわけがない、って思った。嫌われるのが怖くて黙ってるのなんて続くわけないって思ったんだ。
 神経質で、手を洗わないとか爪が汚れてるとか洗濯物の畳み方がいい加減とかものすごく気になるくせに、そしてそれを上手にたしなめたり直してやったりできないくせに、相手がそれに自分で気づいてくれるまで待ってるっていう手前勝手な性格だって、自分で気づいてしまったからだ。
 つまりは独り相撲だったわけだね。30代後半で子供だけでもいた方がいいかと思ったことも、ないわけじゃない。実家にはまあまあ資産があってマンションとかも貸したりしているから、万一私生児産んでもマンションの管理人とかでやっていけるさとか思っていた。
 でも、そういう下心ありありの時というのはガラスブロックには縁がないというのが世の常なわけだ。
 そういやあ、最近近所の子供を可愛いなって思ったりしたんだっけ。欲しいとは思わないけど。
 え、んだから生理止まったのか? なんだそりゃ。